なぜ清澄白河に本格派コーヒーショップが集まるのか。歴史から探る清澄白河のコーヒー旅 キービジュアルなぜ清澄白河に本格派コーヒーショップが集まるのか。歴史から探る清澄白河のコーヒー旅 キービジュアル

なぜ清澄白河に本格派コーヒーショップが集まるのか。
歴史から探る清澄白河のコーヒー旅

食を通じて、その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などの食文化に触れるガストロノミーツーリズム。

今回は、古くから江戸の経済を支えてきた“水の街”であり、10年ほど前から“コーヒーの街”としても注目を集める、清澄白河を訪問します。「サードウェーブコーヒー」の代表格である「ブルーボトルコーヒー」の日本一号店をはじめ、都内屈指のカフェエリアとしても人気なこの街が、“コーヒーの街”になるには理由がありました。

本記事では、なぜ清澄白河が“コーヒーの街”になったのか、おすすめのコーヒーショップとともに紹介します。
※商品情報は記事掲載時のものです。

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清澄白河がコーヒーの街になった理由とは?

隅田川と小名木川が流れ、水辺の景色が広がる清澄白河は、江戸時代には漁業・荷上場の河岸、また海路で運ぶ木材の置き場として栄えた“水の街”。その名残からか、大型倉庫が点在し、水の音や気配を感じられる場所になっています。

1995年に国内最大級のコレクションを誇る東京都現代美術館が開館すると、“アートの街”として有名に。気鋭のアーティストの作品が揃うギャラリーも広がり、多くの人がアート作品を楽しむために訪れるようになりました。

また、2015年にはカリフォルニア州オークランド発の「ブルーボトルコーヒー」日本1号店が開店。一気に“コーヒーの街”として話題になりましたが、実はそれ以前にも、倉庫を改装し大きな焙煎機を置いた本格的なカフェが点在するなど、この街にはコーヒー文化が息づいていました。

川沿いを散歩する人やアートを楽しむ人など、各々の時間が流れる清澄白河では、ゆったりとコーヒータイムを楽しむ人々を数多く見かけます。

では、清澄白河に訪れたら足を運びたい、自家焙煎にこだわったコーヒーショップを紹介します。

清澄白河のコーヒー文化を牽引してきた「The Cream of the Crop Coffee(ザ クリーム オブ ザ クロップ コーヒー)」

東京現代美術館から数分歩くと見えてくるのが、コーヒーカラーでペイントされた外観とかわいい犬のイラストが目印の「The Cream of the Crop Coffee」。2012年にオープンしたこのお店は、アメリカ製の大型ロースターを使用した焙煎所で、「ブルーボトルコーヒー」の創業者が飲みに訪れたほどの本格派として、清澄白河のコーヒー文化を牽引してきました。

「3階ほどの高さのあるロースターを置いて本格的な焙煎所を…と考えたとき、どうしても天井が高い物件でないと厳しいということになり。そこで色々探していたら、木材倉庫だった空き倉庫がたくさんある清澄白河にたどり着きました。今の場所は、天井も高く、蒸気を逃がす窓もあり、焙煎機を置くのにぴったりです。基本、改築はせずに昔のまま使っています」とスタッフさん。
昔の建物をリノベーションして使い続ける文化が根付く街ならではです。

元木材倉庫を改装した天井が高い店内にはロースターが鎮座しており、ハンドドリップで入れられたコーヒーのいい香りが充満しています。店内のソファや店先のベンチでは、街のギャラリー巡りを楽しむ人やご近所さんがコーヒー片手に語らっている姿を見かけることができます。

お店で焙煎したコーヒー豆でこだわりの一杯を

アジア、アフリカ、中南米から選りすぐったコーヒー豆を、都内で見かけるのは珍しい本格的な巨大ロースターで焙煎。焙煎師が産地や焙煎の特徴などからお客さんの好みに合った豆を提案してくれます。
「昔から多くの人々の会話が飛び交ったにぎやかな場所だったこの土地の名残として、せめてコーヒーを選ぶ時くらいは、お客さんと対話をしながら提供できたらと思っています」

お客さんとの対話で選ばれた豆をその場で挽き、一杯ずつ陶器のドリッパーでスムーズにハンドドリップ。香りの高い「シングルオリジン」と深煎りの「オリジナルブレンド」などコクのあるスペシャルなコーヒーを楽しむことができます。その手慣れた動きを見ているとコーヒーへの期待が高まります。また、コーヒー豆という自然素材に価値を見出し、オリジナル石鹸も販売しています。

コーヒーのお供にぴったりな「B&B ガレット クラシック・ココア」

淹れたてのコーヒーと合わせて食べたいのが、フランスの歴史ある紅茶専門店「ベッジュマン&バートン」で愛されている焼き菓子。なかでも薄焼きのオリジナルガレットは、一口食べるとバターの香りが口いっぱいに広がり、塩気と甘みのバランスがよくコーヒーとの相性も抜群です。サクッとした食感もクセになります。

発酵バターにフランス・ブルターニュ地方のゲランドの塩を使用した、1枚でも十分に食べ応えのあるガレットは、優雅なコーヒータイムを演出してくれます。

清澄白河のコーヒーコミュ二ティや地域の人々と交流を深める「iki espresso(イキ エスプレッソ)」

東京下町に根付く“粋”と、ニュージーランドで使われているニウエ語のリーダーという意味を持つ“iki”を冠した、ニュージーランドのカフェスタイルを取り入れた「iki ESPRESSO」。こちらも古い倉庫をリノベーションしたコンクリート打ちっぱなしの開放的な店内が印象的です。

モーニング営業や本格的なフード提供など、朝から地域の人々や観光客が多く訪れ、店内が賑わいます。カウンターのガラスケースの中には、マフィンやケーキといったスイーツが数多く並んでいるのが特徴。コーヒーとスイーツのマリアージュを楽しめます。

ニュージーランドにルーツをもつ自家焙煎のコーヒー

ニュージーランドでは、家庭、会社に加えた第三の居場所といわれるカフェ。そんな居心地のいい場所を日本にも、と始めた「iki ESPRESSO」。
世界各地で厳選された豆を自家焙煎、ブレンドしてその場で挽いて一杯ずつていねいにドリップした「イキブレンド」は、どんなシーンでも合う定番の一杯として多くの人に愛されています。主張しすぎないのにコクがあるのが特徴で、スイーツなどペアリングの相手を選びません。自家焙煎のため、焙煎度やテイストも細かく教えてもらえるのもうれしいところです。

朝8時からオープンする当店は、朝の通勤前や、犬の散歩途中になど、よく訪れる常連客と楽しくコミュニケーションを取るスタッフの様子が垣間見れます。
そんな、地域の人々との交流を大切にしたいという思いから、コーヒーの基礎知識〜実践まで、ikiのバリスタ・スタッフが丁寧に教えるワークショップ「ハンドドリップコーヒークラス」を、定期的に実施。コーヒーを通して人々とのコミュニケーションを図る活動も積極的に行っています。

コーヒーを引き立てるオリジナルスイーツ「ブラウニー」と「グルテンフリーオレンジケーキ」

コーヒーとの相性を考えて開発された、オリジナルスイーツにも注目です。
ボリューミーで素朴な味わいの「ブラウニー」は、チョコチップのザクザクした食感が楽しい一品。
ブレンドコーヒーやエスプレッソとよく合い、濃厚だけど1個ペロリと食べられるおいしさです。イートインの場合は生クリームをトッピングすることができます。

ちなみにこのお店は、グルテンフリーメニューが多いのもうれしいところ。中でもアーモンドパウダーを使用した「グルテンフリーオレンジケーキ」は、グルテンフリーとは思えないしっとり感がクセになります。
オレンジを余すことなく丸ごと使用しているため、一口食べるとさわやかな酸味が口いっぱいに広がり、たっぷりのピールがアクセントとなる大人も楽しめるケーキです。イートインの場合はトッピングで、生クリームか水切りヨーグルトをつけることが可能です。

ショーケースに並ぶケーキやマフィン、ブリオッシュなどは日替わりなので、ぜひ一期一会を楽しんでください。

徒歩5分圏内には焙煎所を備える「iki Roastery & Eatery(イキ ロースタリー アンド イータリー)」も

「iki ESPRESSO」から5分ほど歩いた隅田川沿いにある店内は、倉庫を生かした合掌造りの高い天井に自然光が差し込む開放的な空間が広がっています。
併設されたベーカリーで焼かれたパンやスイーツ、サンドイッチなどのフードと自家焙煎のコーヒーなどを味わえるカフェとして、朝から多くの人が訪れています。

友達との会話を楽しんだりロースタリーで焙煎する様を眺めながらコーヒーをいただいたりと、各々の時間を過ごす人たちでいつもあふれている店内。時にはイベントが開かれるなど、新たな交流の場としてにぎわっています。

ゆったりとした時間が流れる清澄白河

昔は木材を扱った商人たちが行き交っていた清澄白河は、今ではかつての木材倉庫を生かしたロースタリー・カフェが立ち並び、多くの人が訪れる交流の場に。アートやカフェ、隅田川沿いの散策を楽しむ人たちが思い思いの1日を過ごしています。

ゆったりとした時間が流れる中、ここでしか味わえないコーヒーとスイーツを堪能するのも、この街の楽しみ方のひとつです。

カフェや街並み、隅田川などを眺めながら、その土地の気候風土が生んだ食材・習慣・伝統・歴史などの食文化に触れるガストロノミーツーリズムを、本格派コーヒーショップが集まる“清澄白河”で楽しんでみてはいかがでしょうか。

撮影=富田一也/取材・文=玉置晴子

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