東京銭湯プロジェクト 『わ~るどみ~つ湯寄席』
2023年10月13日に、東京の魅力発信プロジェクトの一環として、荒川区西尾久にある銭湯・梅の湯にて、『わ~るどみ~つ湯寄席』が行われました。
日本の伝統的なカルチャーである「銭湯」。その街や人々の「素」の顔を見せてくれる銭湯は、大変魅力的なスポットです。
銭湯が登場した当初は、自宅にお風呂がない人に体や髪を洗う場を提供する公衆浴場としての役割がメインで、湯屋と呼ばれていました。しかし、関東大震災で東京の銭湯はほぼ全壊してしまいました。その復興にあたったのが、宮大工たちでした。「人々に元気を与えられる場所となるように」と、宮大工は銭湯の建築に神社仏閣を彷彿とさせる宮造り建築を採用。東京の銭湯は、歴史的な存在意義を持つようになったのです。
そして現在も、銭湯は変化しながらも風情やその土地のカルチャーを感じられる場として、多くの人を楽しませています。
銭湯の必須アイテムにTokyo Tokyoアイコンを
開場前からお客さんが並び、通りすがりの人々も「今日は梅の湯さんでなにかイベントがあるの?」と声をかけてくれるような、人情味溢れるあたたかな街・東京都荒川区西尾久。小台本銀座の商店街の一角に、梅の湯はあります。
今回のイベントは、主催者である朝日新聞社のホームページや、東京で発行されている朝日新聞東京都内版の記事から応募者を募り、抽選で40名程のお客様をご招待。開場時間前から、イベント開始を待ちわびる人々の姿もありました。
梅の湯の暖簾をくぐると、受付ではプレゼントとしてTokyo Tokyoのアイコンが入ったトートバッグやボールペン、そして記念のアイコン入りタオルが配布されていました。「タオルは銭湯の必需品だからいいね!」と喜びながら、その場でトートバッグを肩に掛ける方の姿も見受けられました。
階段を上がってたどり着いたロビーには、高座の両サイドにTokyo Tokyoのバナーが設置されており、来場者は記念撮影をしたり、グッズを眺めたりと、思いおもいに開演までの時間を過ごしていました。
普段着の東京の魅力を発信する場として、「銭湯」は最高の舞台
「銭湯は、普段着のありのままの東京の魅力的な姿を伝えられる、格好の場。その銭湯を舞台に、日本語含め8か国語で落語を披露する三遊亭竜楽さんと、スウェーデン人初の噺家である三遊亭好青年さんのユニット『めにかる』による漫談や革新的な新作落語、そして日本の古典芸能である落語を披露する『わ~るどみ~つ湯寄席』を開催することにしました。落語界に新しい風を吹き込もうと精力的に活動されている噺家さんが、英語による現代的な落語と伝統的な古典落語を披露することは新たな東京の魅力発信につながり、Tokyo Tokyoのコンセプトと合致すると感じています」と語るのは、今回のイベント主催者である朝日新聞デジタルマガジン&Travel副編集長の橋本正夫さん。
「海外はもちろんですが、日本国内の旅行者も、東京の銭湯にぜひ訪れてほしいと思っているんです。ホテルや旅館、六本木や東京タワーはいわば、メイクをした東京。でも、銭湯はその地域を映す鏡ですから、すっぴんの東京の姿を見ることができます。人々の日常に飛び込むことで、印象深い旅の思い出を作ることができるんです」
&Travelの人気連載「ニッポン銭湯風土記」の編集を担当する橋本さん自身も銭湯好きで、旅先ではよく訪れるそう。だからこそ、最先端カルチャーが集う東京だけでなく、その地域のぬくもりを感じられるような、古くから受け継がれる銭湯を通して、東京の魅力をより多くの人たちに伝えたいと語ります。そのきっかけのひとつになれば、と今回のイベントを企画したそうです。
「東京にある銭湯でも革新的なアートを取り入れたり、漫画や駄菓子を置いたりと、時代に合わせて工夫を凝らしたニュースタイルの銭湯もあります。それでも、その地域ならではのぬくもりが感じられる銭湯の本質的な魅力は変わっていません。宮造りに格子の天井、両側には箱庭があって、池に鯉がいるような古来のスタイルを守り続けている伝統的な銭湯でも、もちろんそれは同じです。スタイルは違っていても、東京の銭湯には東京の“今”も“昔”も、その地域の人たちの“素の魅力”も、つまっているんです」
多種多様な人が東京の魅力を感じる一日に
江戸時代から現代まで、その歴史のなかで独自の文化を育んできた日本の銭湯。伝統的な日本の銭湯にフィンランド発祥のサウナ文化が融合するなど、古きよき日本の文化と、新たなスタイルが共生する形態も、すっかり定番となっています。
形を変えながらも人々の心を掴んで離さない銭湯を舞台に開催された『わ~るどみ~つ湯寄席』には、たくさんの人が集まりました。老若男女、着物姿の方から粋な洋装姿の方、イタリア人の来場者もいて、会場は大盛況。まさに、東京の伝統と革新が共存する空間を、多くの人に提供できた一日となりました。
来場者のなかには、イベントのあとに入浴をしようとTokyo Tokyoのアイコンが入ったタオルを手に、15時の開店を待つ姿もありました。伝統と革新、地域の交差点として発展しつづける銭湯から、新たな東京の魅力を発信することができました。