マンガ・アニメを通じた、豊島区のまちづくり

東京都⼼部の北⻄に位置する豊島区は、都内でも有数の人口密度を誇る都市であり、中でも多くの人が集まる池袋周辺は、アニメやマンガファンにも人気のエリアとして知られています。

また、豊島区は、手塚治虫や藤子不二雄コンビなど日本を代表するマンガ家が若かりし頃住んでいたアパート「トキワ荘」を有し、古くからアニメやマンガと関係が深いことでも有名です。残念ながら老朽化のため取り壊しとなってしまったトキワ荘ですが、このような貴重な場所をマンガ・アニメ産業の拠点とし、次世代に継承・発信するべく開設されたのが「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」です。

当時のトキワ荘をリアルに体験できるフロアでは、原稿や机、ペン、空き瓶、食器など細部に至るまで忠実な再現がなされており、まるでほんの少し前までマンガ家がその場にいたかのような錯覚に陥るほどです。また、企画展示室では期間限定の展示やイベントが定期的に開催され、大人から子どもまで多くのファンで賑わっています。

豊島区でこの取り組みを担当する、マンガ・アニメ活用担当課長の熊谷崇之さんは、「最近のアニメやマンガだけでなく、その原点となった作品や作家たちを知ることも大切だと考えます。黎明期のマンガ家たちは、子どもたちに夢やメッセージを伝えたいという情熱から、マンガを描き始めました。そんな想いを後世に伝えていきたいと思っています」と話します。

さらに豊島区では、トキワ荘マンガミュージアムを中心に、地域が一体となった「南長崎マンガランド事業」を進めています。この取り組みは、周辺に点在する「トキワ荘跡地モニュメント」や「トキワ荘マンガステーション」、マンガ界の巨匠・赤塚不二夫所縁の「紫雲荘」といった関連施設と連携し、地域の活性化を促すものです。地域と縁の深いマンガ・アニメ文化を活用した新たな取り組みは、持続可能なまちづくりに大きく寄与することが期待されています。

地域活性化のため南長崎エリアと共に力を入れている東池袋周辺には、マンガ・アニメの関連施設が立ち並ぶ「乙女ロード（通称）」があります。連日多くの若い女性で賑わう乙女ロード周辺では、年間を通じて様々なイベントが開催されています。

中でもサンシャインシティで月に一度開催されるコスプレイベントは、家族連れをはじめ海外からの観光客など誰もが参加できます。屋外での写真撮影や街を練り歩くパレードが行われるもので、大変人気を博しています。「このイベントでは、物語の主人公になった気分を味わってもらえたらと思っています」と熊谷さん。世界中で愛されるコスプレという文化を通じて地域の魅力を伝え、国内外から多くの人に訪れてもらうことを目指しています。

加えて、2019年豊島区は、池袋に本店を構える株式会社アニメイトと協⼒し、地域の魅力を伝える短編アニメ映画「池袋PRアニメ」を制作しました。美しいアニメーションと鮮やかな映像により、少年と少⼥が池袋の上空を⾶びながら、街の活気を発⾒していく様⼦が描かれています。アニメファンだけでなく世界中の人々が、地域の魅力を思う存分楽しめる作品となっています。

こうした豊島区のアニメ・マンガ産業の維持や振興、活性化に向けた取り組みは、地域の活性化や⽂化の持続可能性などに加え、労働権利の保障・働き方改革に通ずるディーセントワークや経済成⻑に関するSDGs（持続可能な開発⽬標）にも対応しています。「SDGsというと、環境について思い浮かべる⼈が多いと思いますが、⽂化や労働とも⼤きく関連しています」と熊⾕さんは話します。

このようなSDGsへの取り組みが評価され、2020年7月、豊島区は「SDGs未来都市」に選定されました。「SDGs未来都市」とは、SDGsの理念に沿った取り組みを推進する都市や地域の中から、特に、経済・社会・環境の3つの側面において新しい価値を創出し、持続可能な開発を実現するポテンシャルの高い都市や地域を選定するものです。さらに、2020年10月、「としまSDGs都市宣言」として「国際アート・カルチャー都市」を掲げた豊島区は、芸術・⽂化を通じて産業を誘致することで、多様性に溢れたまちづくりを目指し、様々なチャレンジを続けていきます。

SDGsアイドル・CoCoLo♡RiPPLeの挑戦

東京都の南⻄に位置する目黒区は、中目黒や自由が丘といった洗練されたエリアや、目黒川沿いの桜並木で知られる人気の高い街。そんな目黒区にオフィスを構える映像関連コンテンツ制作会社「千代⽥ラフト」は、世間でのSDGsに対する認知をさらに⾼めるため、アイドルによるPRというユニークな⽅法を考案しました。

2021年に結成されたアイドルグループ「CoCoLo♡RiPPLe」は、歌やプロモーションムービーを通じてサステナビリティやSDGsに関する情報を発信することを⽬的としたグループです。その名のとおり、多くの人々にSDGsを「波及（ripple）」させるため、SDGｓに関するメッセージを歌詞に込めると共に、持ち前の明るさでサステナビリティを分かりやすく印象的に伝えています。若い世代にも⼈気なアイドルという手法は、次世代へSDGsを広めるのに、とても効果が高いと言えるのではないでしょうか。

これまで彼女たちは、気候変動や⾃然保護、不平等など、様々なSDGsに関連するシングルを発表してきました。ミュージックビデオの多くは、ビーチや森など⾃然の中で撮影され、サステナビリティというテーマをより印象的に伝えています。また、楽曲や映像だけでなく、SDGsに関連したイベントやライブ活動も⾏っており、ファンに対してはメールマガジンなどで、SDGsにまつわる情報を積極的に発信しています。

日本のアイドルが海外でも注目を集めている今、CoCoLo♡RiPPLeから発信されるSDGsへの想いを込めたメッセージは、国内にとどまらず海を越え多くのファンに届くかもしれません。「アイドルの力で地球を救う。」CoCoLo♡RiPPLeの挑戦は続きます。

渋谷から社会を変える「アースデイ東京」

国内外から多くの人々が訪れ、活気に溢れる渋谷区。日本を代表するスクランブル交差点をはじめ、渋谷ヒカリエや渋谷スクランブルスクエアといった大規模な商業施設など、日々新たなカルチャーが誕生する街としても知られています。

日本の若者カルチャーの中心地でもあるこのエリアでは、毎年4月下旬に「アースデイ東京」が開催されています。代々木公園やMIYASHITA PARKを中心としたアースデイ東京は、コンサートやトークショー、ワークショップなどを通じて、気候変動や生物多様性、文化における多様性などサステナビリティへの理解を深めることができる大規模なイベントです。

2022年には、アースデイ東京の一環として「サステナブルファッション」「エシカルビューティ＆ヘルスケア」「ヴィーガン＆オルタナティブフーズ」という3つのテーマにフォーカスした「サステナブルファッションウィーク」が開催されました。大量生産・大量消費に依存する社会を見直し、より未来志向で環境に優しいファッションのあり方を考える機会を、参加者に提供するものです。2023年にも多様性をメインテーマとして、引き続き開催予定です。

アースデイ東京では、多くの若者に影響を与える渋谷というカルチャーを原動力に、誰もが実現できる⼩さなライフスタイルの変化を提示し続けています。これらは一つのきっかけに過ぎないかもしれませんが、やがて輪が広がり、地球を守り社会を支える大きな一歩につながるかもしれません。アースデイ東京が開催するイベントやワークショップを通じて、地球について学んでみませんか。

サステナブルな社会へ。多様な東京のカルチャーとともに

多様性に溢れた東京のカルチャー。古くから受け継がれる文化をベースに、次々と新しく生まれる文化が加わり、唯一無二のカルチャーを育んできました。

伝統と革新が根付く東京のカルチャーも、サステナビリティの視点で見ると、まちづくりや文化の継承、情報発信と様々な取り組みが繰り広げられていることが分かります。サステナブルな社会を目指す上で、「楽しみながら」向き合うというカルチャーが東京にはあるのかもしれません。ぜひ、東京のバラエティに富んだカルチャーに触れ、サステナビリティについて学んでみませんか。