伝統工芸が紡ぐサステナビリティ メインビジュアル伝統工芸が紡ぐサステナビリティ メインビジュアル

伝統工芸が紡ぐサステナビリティ

ヤスリで削られた木の芳しい香り、様々な色に染まった絵の具の筆、張り詰めた空気に静まり返る工房ーー。そして熟練した手つきで黙々と作業を進める職人。日本の伝統工芸には世界でも類を見ない技術と、奥深い美の世界があります。

東京には、今なお数多くの伝統工芸があり、「東京の伝統工芸品」として41品目が指定されています。また、そのほかにも多くの伝統技術が、時代ごとの職人たちによって受け継がれ、人と地域、そして文化を紡いできました。現代では後継者不足等により、こうした伝統工芸や技術の伝承は難しくなってきておりますが、これらの伝統技術には様々な工夫を施した先人たちの知恵が詰まっており、現代にて注目される文化面・環境面のサステナビリティと密接にかかわっています。今回の記事では、東京で今なお受け継がれている伝統工芸や技術を取り上げ、ご紹介していきます。

伝統工芸が紡ぐサステナビリティ イメージ

東京・青梅にある伝統的な藍染工房「壺草苑」にて藍色に染まる職人の手

  • 金継ぎ:
    より強く、美しく

  • 藍染:
    「ジャパンブルー」を
    生み出す自然の芸術

  • 東京の伝統工芸を
    未来につなぐ

  • 過去を紡ぎ、
    新たな未来へ

金継ぎ:
より強く、美しく

藍染:
「ジャパンブルー」を
生み出す自然の芸術

東京の伝統工芸を
未来につなぐ

過去を紡ぎ、
新たな未来へ

金継ぎ:より強く、美しく

伝統工芸が紡ぐサステナビリティ イメージ1

手仕事屋久家の金継ぎが施された器

金継ぎの起源には諸説ありますが、15世紀頃に、時の将軍・足利義政が愛用の茶碗を割ってしまったことがその始まりの一つとされています。義政が割れた茶碗を中国へ修理に出したところ、鎹(かすがい)と呼ばれる見栄えのしない金属の留め具で補強されて戻ってきたことに落胆したそうです。そこで日本の職人に依頼したところ、割れた箇所を漆でつなぎ、金の粉で装飾されて戻り、茶碗は完全に修復されただけでなく、唯一無二の美しいものに生まれ変わったと、将軍は大喜びしたという話です。

金継ぎとは、このように割れたり欠けたりした陶磁器の破損した部分に漆を塗って繋ぎあわせ、金や銀の粉を装飾して修復する日本の伝統的な修復技法です。別名「金繕い」とも呼ばれるこの技法は、他の修理技法とは異なり、壊れた部分の"キズ "を一つの魅力として扱い器の割れ目を芸術的に際立たせ、本来なら使えなくなってしまったものを世界に一つしかない器に再生させます。新しいものを買うのではなく、修理して魅力的に仕上げるこの無駄のない技法は、サステナビリティのお手本ともいうべきものです。

伝統工芸が紡ぐサステナビリティ イメージ3

手仕事屋久家で手にした、金継ぎが施された素敵なコレクションの数々

杉並区にある「手仕事屋久家(てしごとやくげ)」は、陶芸を始めて約50年、金継ぎを始めて40年の工房です。新高円寺駅から徒歩10分ほどの場所にある店舗には、金継ぎが施された陶磁器が所狭しと並んでいます。

「手仕事屋久家」は夫婦で経営しており、金継ぎ修理サービス、金継ぎワークショップ、ぐい吞み作りワークショップなどを行っています。金継ぎワークショップの所要時間は約2時間半で、参加者は壊れた陶磁器を持参して修理することも可能です。

伝統工芸が紡ぐサステナビリティ イメージ5

お気に入りの金継ぎを手にする久家淑子さん

「金継ぎは、壊れたものをより強くすることができるんです。つまり、たとえ壊れたとしても、新たな力を得て前に進むことができるのです」と久家さんは目を輝かせながら教えてくれました。金継ぎの魅力を知っていくにつれ、その魅力は久家さんの人生の指針ともなっていったそうです。

金継ぎのワークショップには世界中から多くの人々が訪れており、壁にかけられたカレンダーは予約の書き込みでいっぱいです。店内には、ドイツ、ブラジル、フランス、アルメニア、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど、参加者の出身国の国旗が飾られています。「ワークショップに参加すると、幸せな気分になれるとよく言われます」と久家さん。金継ぎは、割れた食器を再利用することやウルシの木から抽出した天然漆のみを使用するなどの環境にも優しい技法であることに加えて、日本の伝統文化に触れることができるため、サステナブルな体験を求める旅行者にとって、これ以上にない体験なのかもしれません。「物を大切にする文化は重要です。そして、日本独自の伝統文化を継承していくことも必要だと思います」と久家さんは話してくれました。ワークショップで完成した金継ぎの器によって、参加者の過去の思い出と、日本の伝統文化に触れた新たな思い出が繋がれます。

伝統工芸が紡ぐサステナビリティ イメージ7

東京・八王子の伝統的な織物技法

東京の八王子にも、代々続く伝統工芸「多摩織」があります。多摩織とは、八王子で発祥した5種類の織物の総称です。八王子はかつて桑の都と呼ばれ、養蚕や製糸を含む織物業で日本有数の産地として発展しました。100年以上の歴史を持つ「澤井織物工場」では、その伝統を受け継ぎながら、スカーフやハンカチ、洋服など、現代のファッションに多摩織を取り込んでいます。また、澤井織物工場では、八王子の伝統工芸を身近に感じてもらうため、国から認定された伝統工芸士によるワークショップを開催してコースターやランチョンマットといった小物を織る体験ができます。さらに、若い世代が多摩織に触れる機会を増やすため、積極的に多くのアパレルメーカーと提携するなど、様々な方法で歴史ある技術の継承に取り組んでいます。

  • 金継ぎ:
    より強く、美しく

  • 藍染:
    「ジャパンブルー」を
    生み出す自然の芸術

  • 東京の伝統工芸を
    未来につなぐ

  • 過去を紡ぎ、
    新たな未来へ

金継ぎ:
より強く、美しく

藍染:
「ジャパンブルー」を
生み出す自然の芸術

東京の伝統工芸を
未来につなぐ

過去を紡ぎ、
新たな未来へ