東京の次世代に学ぶサステナブルへの取り組み
サステナブルな社会へと成長するための大きな原動力として、若い世代の活躍が大きく注目されています。東京でも若者たちがサステナブルについて学び、自分自身のライフスタイルを変化させるだけでなく、個の取り組みから地域社会へサステナブルなムーブメントが広がるよう、様々なプロジェクトを始めています。
今回の記事では、アートの力を活用した東京ドームシティのプロジェクトと、「マイボトルへの給水」を起点にサステナブルな社会に貢献する取り組みをご紹介します。若い世代は、これまでに築き上げられてきた東京の観光資源を、どのように受け継いでいくのでしょうか。彼らの視点を通じた事例を見ながら、その答えを一緒に考えてみましょう。
東京ドームシティの
アートに学ぶ、
新たな視点1本のマイボトルから
始まるサステナブルな
旅のあり方若い世代の取り組みが
東京観光の未来をつくる
東京ドームシティのアートに学ぶ、新たな視点
歴史と文化が薫る街として知られる、文京区。根津神社、湯島天満宮に代表される神社仏閣や、小石川後楽園、六義園などの庭園のほか、緑豊かで建築的な見どころも多い東京大学・本郷地区キャンパスがあることでも知られています。
そんな文京区にある東京ドームシティは、東京のランドマークのひとつとして人気を博し、野球場やコンサート会場として有名な「東京ドーム」、入園無料の遊園地「東京ドームシティアトラクションズ」、天然温泉やショッピングなどが楽しめる「ラクーア」、高さ43階・1,006 室の客室を有する「東京ドームホテル」などから成る都市型複合レジャーランドです。多様なエンターテインメントを楽しめる東京ドームシティは地域社会への貢献にも力を注いでおり、そのひとつが「東京ドームシティ アートプロジェクト」です。
東京藝術大学、東京藝術大学芸術創造機構と連携した「東京ドームシティ アートプロジェクト」は、「東京藝術大学による東京ドームシティの調査研究」「本物のアートに身近に触れられる機会の創出」「新鋭アーティストの育成と発表機会の創出」を3つの柱に掲げた、5年間にわたるプロジェクトです。アート文化の発展や、アートを通じた社会課題の解決、そして社会的豊かさの創出を目指し活動を行っています。
プロジェクトの第一弾として、東京藝術大学出身の若手アーティスト、高橋臨太郎さんが作品を制作しました。高橋さんによる2つの作品「Radius harps」「After a typhoon」は、東京ドームシティ内の「Gallery AaMo」と水道橋駅をつなぐ地下通路に展示されています。
「Radius harps」は、人の背丈ほどある弓なりの木板に水糸を一本張ったハープで、人の手ではなく風により音が奏でられます。3人のパフォーマーがこのハープをいくつもつなぎ、東京ドームシティの風の通り道で演奏をしました。この会場には、実際に使用したハープと演奏した際に記録した音と写真が展示されています。「After a typhoon」は、東京ドームの出入口で吹く突風や屋上のビル風に向かってパラシュートを引っ張る、パフォーマンスの記録写真です。
東京ドームの屋根は空気で支える構造となっているため、ドームの扉を開けた際、通常より強い風が吹き抜けます。制作にあたっては、この風がインスピレーションの源となったと高橋さんは語ります。「普段はなかなか気付きにくいものを、目や耳で感じていただきたいです」。
東京ドームシティ アートプロジェクトが始まる前の地下通路内は、広告の並ぶ何気ない通路でしたが、今では人々の視覚や聴覚を刺激する場所として機能しています。若いアーティストが自分の価値観を表現する場を提供しながら、訪れた人に新しい発想のヒントを与えることができるという点が、このプロジェクトの優れた特徴のひとつです。
株式会社東京ドーム 業務部 運営統括グループ 課長代理の飛田康貴さんは、「作品を見た方に、ものごとの新しい見方や捉え方を提供できていたら嬉しく思います。また、美術館に足を運ばずとも街を歩く中で新たな発見を得られるという点が、このプロジェクトの強みです。この多様性の時代において、様々な考えを受け入れるためにも、こうした新たな視点を身につけるということは、とても大切だと考えています」と話します。
このプロジェクトを率いる東京藝術大学の中村政人教授は、「通常の場合、芸術は最終的に完成した作品を重要視しますが、このプロジェクトのゴールは社会との関わりであり、そのプロセスとして芸術作品があるという位置付けなのです」と語ります。東京ドームシティ アートプロジェクトは、東京ドームシティ内の空間資源を文化芸術資源として活用し、社会と企業活動が共に成長し価値を生み出す、創造的な社会のモデルケースになることを目指しています。
若い世代が他の世代に影響を与える力があるかという問いに対し、中村教授と飛田さんは大きく頷きます。「アーティストの年齢や経歴は、アートにおいてあまり関係ありません。重要なのは、作品が⾒る方にどのような感動を与えるかだと考えています」。この『アートで感動する』という体験が、世の中にポジティブな変化をもたらす原動力になるのではないでしょうか。
高橋さんの作品は2023年7月まで展示されていますので、ぜひ実際に足を運び、アートに価値観を揺さぶられる感覚を味わってみてください。
東京ドームシティの
アートに学ぶ、
新たな視点1本のマイボトルから
始まるサステナブルな
旅のあり方若い世代の取り組みが
東京観光の未来をつくる