品川開発プロジェクト：その革新的な都市計画

はじめに紹介するのは、東日本旅客鉄道株式会社（以下、JR東日本）が主導する都市開発プロジェクト・品川開発プロジェクトです。このプロジェクトは田町駅から品川駅周辺にかけてのエリアを、都市生活とサステナビリティを両立する最先端の街として生まれ変わらせる取り組みです。第1期の区域面積は約9.5ヘクタールにおよび、国内外へ抜群のアクセスを誇るこのエリアを、さまざまなパートナーとの共創を通じて、「100年先を見据えた心豊かなくらしのための実験場」とすることを掲げています。

品川開発プロジェクトが第1期として推進している「高輪ゲートウェイシティ」のまちづくりでは、2026年までに4棟のビルを建設予定です。東京で初となるJWマリオットホテルをはじめ、オフィスや商業施設、病院、居住スペースなど、さまざまな施設が入ります。効率的に電力を供給するエネルギーセンターも設置するほか、緑地を取り入れた都市計画も実施します。

そして、この第1期の大きな注目点のひとつが「高輪ゲートウェイ駅」です。

2020年3月に山手線・京浜東北線の新駅として開業した高輪ゲートウェイ駅には、建築美と最先端のテクノロジー、そして環境への配慮がすべて揃っています。
設計は建築家・隈研吾氏によるもので、折り紙をモチーフにした天井や、街並みを見渡せる大きな窓、温かみを感じさせる杉の集成材を使った梁などが特徴です。太陽光パネル・小型風力発電機による再生可能エネルギーや、無人コンビニの導入・AIやロボットを活用した駅サービスの実証実験の積極的な実施と、最先端のテクノロジーとサステナブルな設計が大きな魅力のひとつとなっています。また、駅内には訪日観光客にも便利な多言語ディスプレイが設置されており、至る所で未来を感じる場面に出会えるかもしれません。

このほかJR東日本は、地域交流を生みだすまちづくりを目指しています。その取り組みのひとつが、ビールの原料となるホップの栽培プロジェクトです。2年ほど前から、地域の事業者や学校、住民と連携して、高輪ゲートウェイ駅や周辺エリアでホップの栽培をスタートしました。この取り組みは、参加者たちが自然に触れるきっかけとなっただけでなく、参加者同士の交流やコミュニティ醸成にもつながりました。現在、このホップをつかったビール「TAKANAWA HOP WAY」が、高輪ゲートウェイ駅構内のコンビニや一部の飲食店にて数量限定で販売されています。

また、JR東日本では、品川開発プロジェクトのサステナビリティを広く紹介するため、暖房設備や発電機、その他のインフラに関わる設備を見学できるツアーも計画しています。

品川開発プロジェクトは、高いエネルギー効率目標を掲げ、地域のCO2排出量の削減を目指しており、日本で初めて「クライメット・ポジティブ開発プログラム」に採択されました。これは、世界の都市が連携して温室効果ガスの排出削減に取り組むネットワークとして設立された「C40（世界大都市気候先導グループ）」が主導する国際プログラムで、低炭素都市の実現に向けたモデルとなる開発事業を認証する制度です。JR東日本 マーケティング本部 まちづくり部門 品川ユニット マネージャーの天内義也さんは、「鉄道会社として、次世代の不動産開発モデルを世界に示していきたい、これからのライフスタイルを体験できる場所をつくり、未来社会に貢献したいと考えています」と話します。

また、多様な文化の維持や、イノベーションの促進という面では、共創と文化活動の拠点として展示場やホールなどを備えた「文化創造棟」の建設が予定されています。天内さんは、文化創造棟について「さまざまな人が行き交い、交流する国際的な施設を目指しています。海外から来た方には、品川エリアを訪れるたびに新しい発見や面白さを感じていただき、その経験を、世界がより良くなるためのヒントにしていただけたら嬉しく思います」と話します。

品川開発プロジェクトが掲げる未来へとつながるまちづくりの目標によって、このエリアは経済的、社会的、環境的にバランスのとれた地域となり、訪れる人々や住民が、進化する東京を体験できる場所となるでしょう。

豊洲：美しい水辺のまちづくり

水辺の景観が美しく緑豊かな街、江東区。その代表的な地域として豊洲が挙げられます。豊洲の美しさを象徴するものとして真っ先に思い浮かぶ場所といえば、開放的な空と海が魅力の公園ではないでしょうか。海沿いを走る全長4.5kmのランニングコースで結ばれた4つの公園（豊洲公園、豊洲ぐるり公園、豊洲六丁目公園、豊洲六丁目第二公園）は、まとめて「豊洲ぐるりパーク（豊洲ふ頭内公園）」と呼ばれています。

中でも人気の豊洲公園では、青空市「豊洲スタイルマーケット」が不定期で開催されており、手づくりのお菓子や工芸品などが購入できます。このマーケットで得た収益は、豊洲地区の景観をより美しく快適なものとするため、緑の育成・啓発活動、園芸教育、環境教育を行う「豊洲グリーン100プロジェクト」の運営費に充てられています。豊洲ぐるりパークではほかにも、散歩やランニング、釣り、さらにはバーベキューや本格フレンチまで楽しむことができるため、バラエティに富んだスポットとしてオススメです。

公園でサステナブルな活動が行われている一方、企業による豊洲のまちづくりも推進されています。
東京ガス不動産株式会社（以下、東京ガス）は長期的な視点で生活の質や効率、環境のバランスを重視した「TOYOSU22」というビジョンを定め、「スマートエネルギー」「スマートグリーン」「スマートコミュニティ」という3つの 「スマート」 をコンセプトにまちづくりを行っています。

1つ目の「スマートエネルギー」は、エネルギー効率に関するコンセプト。豊洲エリア内に「スマートエネルギーセンター」を設置し、エリア全体で熱と電気を効率的に活用して、省エネとCO2排出量の削減を実現するスマートエネルギーネットワークを段階的に構築しています。2つ目の「スマートグリーン」は、水辺の景観や緑を都市デザインに取り込むこと。未来のTOYOSU22を水と緑にあふれた美しいエリアにするため、「自然の緑」と「都市の緑」をクロスさせる「グリーンクロス」に取り組んでいます。最後の「スマートコミュニティ」は、住民のウェルビーイングを高めるため、スポーツなどを通じて住民同士がつながれる空間やイベントなどを提供することを指します。

この3つの「スマート」に加えて、ビジネスやホテル、スポーツ施設などに土地を貸し出すことで、賑わいのあるまちづくりを目指しています。体験型ミュージアム「チームラボプラネッツTOKYO」（2023年末閉館予定）や、回転舞台を備えた没入型エンターテイメント施設「IHIステージアラウンド東京」など最新の施設も充実しており、街の活性化に貢献しています。

葛西臨海・海浜公園

千葉県との県境に位置する江戸川区。南端の海沿いにある葛西臨海公園と葛西海浜公園（以下、葛西臨海・海浜公園）は、都市部における自然保護の理想的なあり方を目指しています。

葛西臨海・海浜公園は、湿地の復元と保全を目的に、訪れる人が海辺の自然を楽しめる場所として1989年に開園しました。陸側の葛西臨海公園と、海に浮かぶ葛西海浜公園は橋で結ばれており、東京湾の多様な生物を守る重要な役割を担っています。

葛西臨海公園の見どころのひとつは、鳥類園です。毎年約120種類の野鳥が飛来するといわれており、この野鳥を呼び込むため、地域のボランティアによる植生管理が行われています。また、公園内には葛西臨海水族園もあり、世界の海の生き物と出会うことができます。

葛西海浜公園は、天然の浅瀬や干潟を含む海域と、2つの人工干潟からなっています。人工干潟は、この地域の湿地帯や動植物の生態系を保護するために、海を埋め立ててつくられました。「西なぎさ」は、バーベキューや夏期の海水浴などレクリエーションが楽しめる場所として一般に開放されている一方、「東なぎさ」は鳥や魚の生息地として保護するため、立ち入り禁止エリアとなっています。

葛西臨海・海浜公園は、自然保護の場であると同時に、住民や観光客が自然の美しさを楽しめるスポットでもあります。公園の動植物に癒されながら、自然環境と都市環境が共存することの大切さについて考えてみてはいかがでしょうか。

サステナビリティを学べるベイエリア

大田区は、日蓮宗の大本山・池上本門寺や多摩川台公園内にある古墳群など歴史を感じさせるスポットのほか、桜で有名な多摩川の土手など、さまざまな魅力が溢れるエリアです。国内外の玄関口・東京国際空港（羽田空港）があることでも知られ、世界中の旅行者が行き交う活気ある地域です。そんな羽田空港に隣接する羽田イノベーションシティは、人々が協働して新しいモノ・コトを生み出す場所として2020年に誕生しました。

羽田イノベーションシティは、買い物や食事、文化体験ができる商業施設に加え、ホテルやオフィス、ライブホールなども併設された大規模複合施設です。特に特徴的なのが研究開発施設で、新しい産業の創出・発信拠点としての役割が期待されています。ほかにも、公園のようにさまざまな人が集まり、偶然の出会いや刺激によって創造性が育まれる場所を目指した「PiO PARK」の展示スペースでは、持続可能な社会を見据えた新製品やテクノロジーを紹介しています。このように充実した設備を備えた羽田イノベーションシティには、先端モビリティや健康医療、ロボティクスなどのハイテク分野からも、より良い未来を実現しようとする企業が集まります。

2023年には、日本の芸術文化の発信・創造の拠点として、アートと最新テクノロジーを融合した新しい文化発信を目指す「アート＆テクノロジーセンター」もオープンが予定されており、さらなるイノベーションが生まれる拠点となっていくでしょう。

環境学習施設、港区立エコプラザ

最後に紹介するのは、「港区立エコプラザ」です。ここは、イベントや展示、ワークショップなどを通して、大人から子どもまで自然への理解を深めることができる環境学習施設で、4つのテーマに沿った講座が用意されています。

1つ目は、省エネや再生可能エネルギー、ヒートアイランド対策など地球温暖化について考える「脱炭素型社会」。2つ目は、生物多様性、緑化推進や緑の保護など人間と自然の共生について考える「自然共生型社会」。3つ目は、リデュース・リユース・リサイクルの3Rやフードロス対策について考える「循環型社会」。そして最後に、2030年までの持続可能な開発目標について考える「SDGs」です。

また、環境保全活動に取り組む団体が会議やワークショップなどを開催できるよう、会議室の貸し出しも行っています。豊富な学習コンテンツと魅力的な体験型アクティビティを提供する港区立エコプラザは、環境にまつわるサステナビリティを学びたい人にとって最適な場所といえるでしょう。

未来に向けたサステナブルなまちづくり

人々の健康や幸せ、経済、そして環境のバランスがとれた社会を実現するために、東京ベイエリアでは自治体や多くの企業がサステナブルな取り組みを行っています。

公園や先進的な施設など顕著な変化から、エネルギー効率や生活の質の向上など一見目には見えない取り組みまで、どれもサステナブルなまちづくりを実現するためには不可欠なものです。

東京ベイエリアで、より良い未来を見据えたまちづくりに触れながら、海と緑と都市が共存するこれからの東京のあり方を体感してみてください。